奄美大島に行って自衛隊の南西シフトについて考えた

 奄美大島の瀬戸内町で元自衛隊の人から、その日近くでミサイル基地の開所式があることや、自衛隊の南西シフトの話しを伺ったので、帰宅してからそのあたりのことを調べてみた。自衛隊や在日米軍の動きはごく大まかにしか理解していなかったけれど、実際に展開しつつあるところに行ってみれば、動きが身近に感じるものだ。これを機に自衛隊の南西シフトについて考えてみたい。というか、理解したことをまとめておきたい。

  大戦中、奄美大島には様々な施設が展開していた。中でも奄美大島と加計呂麻島の間の大島海峡沿いはリアス式の多くの入り江に恵まれていて艦船の絶好の寄港地であった。瀬戸内町古仁屋の旧陸軍弾薬庫を見たが、連合艦隊の停泊地であった加計呂麻島の薩川湾の防衛のために、海峡沿いには旧日本海軍の砲台が多数設置されていた。また薩川湾の奥には、島尾敏夫が大戦末期に特攻隊長だった基地もあった。

 それらは70年以上前のことである。ところが今、再び奄美大島は自衛隊の南西シフトによってさらに軍事施設が作られつつあるのだ。
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 従来から奄美大島には奄美空港近くに奄美大島分屯基地(航空自衛隊那覇基地の分屯基地・奄美市笠利町にあり通信基地)と、瀬戸内町古仁屋の奄美基地分遣隊(海上自衛隊佐世保地方隊の分遣隊・20人規模)の二つがあった。
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奄美大島分屯基地(航空自衛隊)↑

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奄美基地分遣隊(海上自衛隊)↑

  ここに今年3月陸上自衛隊の基地が二つ開所する。奄美駐屯地は奄美市大熊地区のゴルフ場の一部の35ヘクタールの土地に作られている。警備部隊230人と対地空ミサイル運用部隊60人をふくむ350人規模。
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奄美駐屯地(陸上自衛隊)↑

 もう一つは瀬戸内分屯地で、瀬戸内町節子地区の町有地30ヘクタールの土地に作られている。警備部隊130人、地対空ミサイル部隊60人を含む210人規模。
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瀬戸内分屯地(陸上自衛隊)↑

 奄美大島に2つの陸上自衛隊の基地が出来たのは自衛隊の南西シフト体制の一環である。(図は産経新聞)

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 陸上自衛隊は、ここにきて奄美大島だけでなく、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島に新たな展開をしている。また、奄美大島から喜界島が見えたけれど、そちらにも360度全方向から受信可能な通信所がある。

 今年1月9日のNHKでは防衛相が開発会社から馬毛島を160億円で買収契約をしたと報じた。馬毛島(まげしま)は種子島から12キロで、1959年にはトビウオ漁に従事する113世帯528人が住んでいたが、1980年には無人島になっている。くだんの元自衛隊員さんによれば馬毛島は在日米軍の空母艦載機のタッチアンドゴー(FCLP)の島になるという。在日米軍の航空母艦ロナルド・レーガンは横須賀基地を母港としている。その際、艦載機は入港前に厚木飛行場に移動していた。そしてFCLPは硫黄島で行われていた。しかし2018年3月から艦載機は厚木ではなく岩国に移動した。馬毛島は岩国から400キロの好立地である。厚木から硫黄島間の1200キロよりはるかに近い。そして岩国は佐世保の米軍基地にも近いのであり、そちらがもっと活用される可能性がある。今までは佐世保の近くにFCLPをする場所がなかったのに、それが可能になるのだ。とすれば米軍も北ではなくて南西シフトしているのだ。

 2018年3月には佐世保を駐屯地とし、南西諸島の防衛態勢を強化する一環として水陸機動団が発足している。これは上陸作戦を専門としており、日本版海兵隊といえる。現在の隊員数はおよそ2100人で、将来的には3000人規模に増やす予定。海上からの上陸時に使うのは、水陸両用車で、1両の値段はおよそ7億4000万円。陸上自衛隊は合わせて52両を導入する計画。

 さらに考えてみれば、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」全長248mには新たに購入するF35戦闘機を艦載するのであるが、馬毛島で訓練する可能性もある。

 さて、奄美大島は自衛隊基地が増えた。しかも今後拡大できる規模の施設である。これに対して住民はどう思っているのか。もちろん反対する勢力はある。しかし自衛隊を誘致し、歓迎する姿があるのだ。2018年12月4日の南海日日新聞には鎌田愛人瀬戸内町長が防衛省で岩屋毅防衛相と面会し、艦艇配備と基地拡充を要望しているのである。

  瀬戸内町の加計呂麻島の人口統計を見ると、この40年ほどで人口は6分の1にまで減っている。瀬戸内町長は自衛隊の誘致だけでなく大型クルーズ船の誘致もしている。日本全体が来るべき人口減への対処を迫られているけれど、まして離島にとって、これは大変な問題で、できる限りのことをしたいのが心情だと思う。


 


この記事へのコメント

ishiguro
2019年03月06日 16:35
こんなに南西シフトが行われているとは思いませんでした。
いずもにF35が搭載されると、事実上の空母になりますね。流石に空母になりますと、軍隊、軍事力ですね。

もう、ロシアの脅威はないのでしょうか?
中国が本気でやってくるという事態は、想像できませんが、抑止力のデモンストレーションを持っておくということと理解します。これだけの設備と、人数ですと、経済効果からということなんですね。
hanabati
2019年03月08日 12:29
中国の脅威というと、尖閣なのでしょうか。だとしたら、遠回しなことをせずにいっそ自衛隊を駐留させたらと思うのですが。そんなことをしたら戦争でしょうか。それにしても、あの小さな島にこれだけの軍事費をかけるのですかとも思います。そんなことを言うと、袋叩き?
Ishiguro
2019年03月08日 16:24
本当は、スイスのように、永世中立国ということで、兵役の義務はあり、軍隊も強力だが、戦争は仕掛けないというのが理想的なのでしょうが、(スイスでは、各家庭に、マシンガンが数丁あると聞いたことがあります。) 朝鮮戦争以降、冷戦に巻き込まれ、地政学的にも、米国、ロシア、中国が接する日本としては、いずれかの陣営に与することにならざるを得ないのでしょうか?日本の軍事費はやはり、アメリカ陣営に組み込まれてその一旦を担わされている帰結によるものと思います。
hanabati
2019年03月16日 16:27
日本に基地を置き様々な要求をしてくるアメリカか、あるいはアメリカに守ってもらおうとする日本に原因があるのか。スイスは中立国かもしれないけれど、日本はアメリカと同盟関係ですから、この立ち位置を変えないと、ますます軍事大国になるのが必至かと。
小西誠
2019年04月30日 14:24
すばらしい分析です。
ただ、最近分かったことですが、幾つか修正をされた方が良いと思います。奄美大島の基地は、奄美市大熊地区が約50ヘクタール、瀬戸内町節子地区が約48ヘクタールということが判明しました。従来の約2倍です。           また、馬毛島は米軍主力というよりも、自衛隊の南西シフト態勢の事前集積拠点・機動展開拠点です。以下の資料をご参考に。
*「宮古島の5倍、石垣島の2・2倍という巨大基地に変貌した陸自奄美駐屯地!」
https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/805cad8efc3a80de6b25e63cee77c80d?fbclid=IwAR38VP1RqHSuHvFW5H-xeWKIAu-pVM672xTlroH9r5WyEMjdQoM52G35lp4

「馬毛島問題での東京新聞を始めとするメディア報道を糺す――日米の巨大軍事要塞島と化す馬毛島のたたかいの重大局面に当たって」
https://blog.goo.ne.jp/shakai0427/e/e9cf6ebfc6e9c95e996229ec79949b0a?fbclid=IwAR1jCe4tj3EwxBrzlwvLDGiROs7Pqesu111EMKQ2S1VMfhMxefh-YAitxCg

*参考文献(プロローグの「試し読み」)
・『自衛隊の南西シフト―戦慄の対中国・日米共同作戦の実態』https://hanmoto.tameshiyo.me/9784907127251

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